【2025年最新】マンジャロの驚異的効果 | 類似薬の2倍の体重減少と血糖改善の秘密を医師が徹底解説


はじめに:マンジャロとは?革新的なGIP/GLP-1受容体作動薬
近年、糖尿病治療薬として注目を集めているマンジャロ(一般名:チルゼパチド)は、その顕著な血糖降下効果と体重減少効果から多くの医療専門家の間で話題となっています。本記事では、マンジャロの作用機序、効果、類似薬との比較、費用対効果について、科学的エビデンスに基づいて解説します。
マンジャロは、日本イーライリリーと田辺三菱製薬が製造販売している「持続性GIP/GLP-1受容体作動薬」です。この薬剤は、血糖値の高いときにインスリン分泌を促進するため低血糖のリスクが低く、比較的安全に使用できます。また、週1回の皮下注射で患者さんの負担が少ないのも特徴です。
作用機序:二重のホルモン作用
マンジャロはグルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド(GIP)とグルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)という2つのホルモンの作用を持つ、世界初の持続性GIP/GLP-1受容体作動薬です。GIPとGLP-1はともに主に小腸から分泌されるホルモンです。
これまでの糖尿病治療薬ではGLP-1受容体作動薬が主流でしたが、マンジャロは以下の特徴を持っています:
- 血糖依存性のインスリン分泌作用(血糖値が上昇したら血糖値を下げる作用)
- 視床下部(満腹中枢)に作用し食欲を下げる作用
- 胃の動きを抑制し食べ過ぎを防止する作用
これらの複合的な作用により、従来のGLP-1受容体作動薬を上回る効果が期待されています。
マンジャロの臨床効果:エビデンスに基づく評価
マンジャロの効果については、複数の臨床試験で確認されています。特に注目すべきは、血糖コントロールと体重減少における効果です。
血糖コントロール効果
SURPASS-1試験では、BMI 32、HbA1c約8%の2型糖尿病患者に40週マンジャロを投与し、マンジャロ5mgで-1.87%のHbA1c改善作用が認められました。血糖降下薬1剤でHbA1c 1%改善すれば良い方ですので、この約1.9%のHbA1c改善作用は驚異的です。
厚生労働省が提供する糖尿病治療ガイドラインでも、多くの患者においてHbA1cの目標値を7%未満としており、マンジャロの効果はこの目標達成に大きく貢献しうるものです。
体重減少効果
マンジャロ5mgで-7.0kgの体重減少作用が認められました。リベルサス(セマグルチドの経口薬)では約2-4kgの体重減少作用が関の山だったことを考えると倍近い体重減少作用を発揮しており、体重減少作用についても驚異的なデータを有しています。
また、最新の臨床試験では、36週で21.1%、88週で27.8%の体重減少が認められています。この結果は、肥満を伴う2型糖尿病患者にとって非常に意義深いものです。
既存GLP-1受容体作動薬との比較
マンジャロと他のGLP-1受容体作動薬を比較することで、その独自の価値がより明確になります。
効果の比較
SURPASS-2試験において、マンジャロは5mg、10mg、15mg全てにおいてセマグルチド(先発品:オゼンピック)1mgよりも有意にHbA1c改善作用を認めています。端的に言うと、マンジャロはセマグルチド1mgよりも血糖降下作用を期待できるというデータです。
体重減少効果についても、マンジャロは5mg、10mg、15mg全てにおいてセマグルチド1mgよりも有意に体重減少作用を認めています。
これらの比較から、食欲抑制による体重減少効果が従来のGLP-1受容体作動薬よりも大きいにもかかわらず、消化器症状を中心とした副作用が同程度であることは、GIPの作用が影響しているとも考えられています。
用量と剤形の比較
マンジャロは週1回の皮下注射剤で、用量は複数のラインナップがあります:
通常、成人には、チルゼパチドとして週1回5mgを維持用量とし、皮下注射します。ただし、週1回2.5mgから開始し、4週間投与した後、週1回5mgに増量します。なお、患者の状態に応じて適宜増減しますが、週1回5mgで効果不十分な場合は、4週間以上の間隔で2.5mgずつ増量可能です。ただし、最大用量は週1回15mgまでとされています。
対して、類似薬のセマグルチド(オゼンピック)は週1回注射で0.25mg、0.5mg、1.0mgと3種類、デュラグルチド(トルリシティ)は週1回0.75mgの1種類、リラグルチド(ビクトーザ)は1日1回注射となっています。
費用対効果:マンジャロと類似薬の経済性比較
薬価とコスト
2023年3月15日の収載時の薬価は以下の通りです。:
- マンジャロ皮下注2.5mgアテオス:1,924円
- マンジャロ皮下注5mgアテオス:3,848円(1日薬価:550円)
- マンジャロ皮下注7.5mgアテオス:5,772円
一方、他のGLP-1受容体作動薬の薬価は以下の通りです:
- セマグルチド(オゼンピック)0.5mg:2,984円、1.0mg:4,477円
- デュラグルチド(トルリシティ)0.75mg:3,846円
- リラグルチド(ビクトーザ)9mg(3mg/mL):8,357円(半月分)
長期的な費用対効果
費用は保険適用外のため自己負担となりますが、肥満による合併症リスク軽減という観点から費用対効果を検討することも重要です。
例えば、医療費の3割負担の方の場合、マンジャロ5mgの薬剤費は月4618円ですが、マンジャロ15mgの薬剤費は13853円と、より高額になります。
しかし、マンジャロの使用によって得られる以下のベネフィットを考慮する必要があります:
- 強力な血糖コントロール効果による合併症予防
- 顕著な体重減少効果による肥満関連疾患のリスク低減
- 週1回の注射による服薬コンプライアンスの向上
- 他の薬剤併用の減少可能性
マンジャロの課題と注意点
マンジャロの優れた効果が期待される一方で、いくつかの課題や注意点も存在します。
適応と使用制限
日本では美容や痩身目的での使用は推奨されておらず、認められていません。美容目的の場合は自由診療で、自費での支払が発生します。いずれの場合も、定期的な医師の診察が必要です。
また、マンジャロは新薬であり、2023年12月現在、1回の診察で処方できるのは14日分までとなっています。そのため、長期処方が可能となる2024年4月1日までは使用しづらい状況となっています。
副作用と対策
マンジャロの副作用として、吐き気・嘔吐、腹痛、便秘、下痢、食欲不振、消化不良などが挙げられます。
また、重大な副作用として以下のようなものが生じることがあります。
- 低血糖(血糖値が下がりすぎる):冷や汗が出る、手足が震える、強い空腹感など
- 急性膵炎(急性の膵臓の炎症):激しい腹痛が続き、嘔吐を伴う、上腹部や腰背部の痛み、発熱、食欲不振など
- 胆のうの異常(胆のうや胆管に石ができる「胆石症」、胆のうや胆管が炎症する「胆のう炎」「胆管炎」など):上腹部の痛み、発熱、皮膚や白目が黄色くなるなど
これらの副作用に対しては、適切な投与量の調整や、食事内容の工夫などの対策が必要となります。
マンジャロとゼップバウンド:同一成分の異なる適応
最近の動向として注目すべきは、マンジャロと同一の有効成分を持つゼップバウンドの開発です。
ゼップバウンドは、既に糖尿病治療薬として使用されているマンジャロ皮下注(チルゼパチド)の有効成分と同じです。しかし、ゼップバウンドの承認された効能又は効果は「肥満症」、マンジャロの承認された効能又は効果は「2型糖尿病」であり、承認外使用にあたるためゼップバウンドの代わりにマンジャロはご使用いただけません。
当クリニックホームページの「生活習慣病」でも取り上げている肥満症治療薬、GIP/GLP-1受容体作動薬「ゼップバウンド(チルゼパチド)」が、2024年12月27日に製造販売承認されました。これにより、2025年中には薬価収載を経て発売されることが予想されます。
この動きは、肥満症単独の治療オプションとして新たな道を開くものであり、マンジャロの肥満症に対する効果を公式に認めるものとも言えるでしょう。
結論:マンジャロの価値と将来性
マンジャロは、その独自の二重ホルモン作用機序により、従来のGLP-1受容体作動薬を超える血糖降下効果と体重減少効果を示しています。臨床試験の結果からも、特に肥満を伴う2型糖尿病患者にとって、有望な治療選択肢であることが示されています。
費用対効果の面では、薬価自体は他のGLP-1受容体作動薬と比較して若干高いものの、得られる効果の大きさを考慮すると長期的には経済的な選択肢となる可能性があります。特に、糖尿病合併症の予防や肥満関連疾患のリスク低減による医療費削減効果も期待できます。
今後は、心血管イベントの抑制効果や腎保護効果に関する報告が待たれるところですが、現時点でもマンジャロは2型糖尿病治療の新たな選択肢として、その価値が認められていると言えるでしょう。
ただし、マンジャロを含むGLP-1受容体作動薬は、美容・痩身・ダイエット等を目的とした適応外の使用については、安全性及び有効性については確認されておりません。そのため、必ず医師の指導のもとで適切に使用することが重要です。
参考文献(医学論文等)
- 日本イーライリリー株式会社. マンジャロ®総合製品情報概要. 2023.
- 厚生労働省. 糖尿病治療ガイドライン. 2022.
- 田辺三菱製薬株式会社. GIP/GLP-1受容体作動薬の適応外使用に関する注意喚起. 2023.
- 日本糖尿病学会. 糖尿病治療ガイド 2022-2023.
- SURPASS臨床試験プログラム結果. 日本イーライリリー株式会社. 2023.