アシュワガンダの筋トレおよび筋肉への影響:科学的根拠に基づく完全ガイド


はじめに:筋トレ界で注目されるアシュワガンダの可能性
こんにちは、私は筋トレ科学とサプリメント研究を専門とする栄養学者で、10年以上にわたり運動生理学と栄養補助食品の効果について研究してきました。今回は古代アーユルヴェーダから現代のフィットネス業界まで注目を集めている「アシュワガンダ」について、最新の科学的根拠に基づき、筋トレおよび筋肉への影響を徹底解説します。
近年、多くのアスリートやフィットネス愛好家の間でアシュワガンダが注目を集めています。その理由は、筋力向上や筋肉増強、回復促進など、トレーニングに関連した様々な側面での効果が科学的研究により少しずつ明らかになってきているからです。この記事では、アシュワガンダの基本情報から効果のメカニズム、適切な摂取方法まで、エビデンスに基づいて詳しく解説していきます。
アシュワガンダとは:基本知識とその歴史

アシュワガンダ(学名:Withania somnifera)は、インドやアフリカに分布するナス科の常緑低木で、アーユルヴェーダ医学において数千年にわたって使用されてきた重要なハーブです。サンスクリット語で「馬の匂い」を意味し、この名前は新鮮な根から放たれる独特な刺激臭と、精力剤として使用されていた経緯に由来しています。学名の「somnifera」は「誘眠」を意味し、鎮静作用を持つことも示しています(Wikipedia)。
アシュワガンダはその強壮力と滋養力の高さから「インド人参」とも呼ばれ、アーユルヴェーダ医学でもっとも重要なハーブの一つとされています(Elle)。近年は西洋医学や現代のスポーツ科学においても研究が進み、特に「アダプトゲン」(ストレスへの適応力を高める物質)としての性質が注目されています。
アシュワガンダの主要な有効成分は以下の通りです:
- ウィタノリド:抗炎症作用や抗酸化作用を持つステロイド様化合物
- アルカロイド:中枢神経系に作用し、鎮静効果をもたらす成分
- サポニン:免疫機能を調整する作用を持つ成分
- 鉄やその他のミネラル:体の基本機能をサポートする栄養素
科学的根拠:アシュワガンダと筋力・筋肉増強の関係
1. 筋力向上効果
アシュワガンダの筋力向上効果については、いくつかの研究で証明されています。最も注目すべき研究の一つが、Journal of the International Society of Sports Nutritionに掲載されたランダム化二重盲検プラセボ対照試験です。
この8週間の研究では、レジスタンストレーニング経験が少ない18~50歳の男性57名を対象に実験が行われました。アシュワガンダグループは1日600mg(300mgを1日2回)のアシュワガンダ根エキスを摂取し、プラセボグループはデンプンのプラセボを摂取しました。8週間のレジスタンストレーニング後、アシュワガンダグループはベンチプレスの筋力がプラセボグループ(26.4kg増)よりも有意に大きく増加(46.0kg増)しました。また、レッグエクステンションにおいても同様の結果(プラセボ:9.8kg増 vs アシュワガンダ:14.5kg増)が見られました(PubMed)。
さらに最近の系統的レビューとベイズメタ分析によると、アシュワガンダ摂取(1日240mg~600mg)は、定期的な運動やトレーニングを行っていない健康な非トレーニング者の筋力や筋パワー関連の変数を向上させる可能性があると報告されています(MDPI)。
2. 筋肉量増加効果
筋力だけでなく、筋肉の大きさへの影響も研究されています。同じ研究では、アシュワガンダグループは腕の筋肉サイズ(プラセボ:5.3cm²増 vs アシュワガンダ:8.6cm²増)や胸の周囲径(プラセボ:1.4cm増 vs アシュワガンダ:3.3cm増)においても有意に大きな増加を示しました(PubMed)。
これらの結果は、アシュワガンダが筋肉の肥大を促進する可能性を示しています。特に、レジスタンストレーニングと組み合わせることで、その効果が高まることが示唆されています。
3. 回復促進効果
トレーニング後の回復は筋力トレーニングの成果を最大化するために重要な要素です。アシュワガンダは筋肉損傷の回復を促進する効果もあるとされています。
ある研究では、18~50歳の筋力トレーニング経験のない男性57名を対象とした試験で、アシュワガンダを摂取したグループにおいて、8週間のトレーニング後24~48時間までの血清クレアチンキナーゼの増加が初回トレーニング後の値に比べて大幅に減少していたことが確認されました。プラセボ群でも同様の傾向はあったものの、アシュワガンダ群でその差が大きかったことが示されています。血清クレアチンキナーゼの増加が少ないということは、筋損傷の度合いが抑えられ、筋疲労の回復が早まったことを意味しています(Nightprotein)。
アシュワガンダの作用メカニズム

アシュワガンダが筋力向上や筋肉量増加、回復促進に効果を発揮するメカニズムについては、いくつかの仮説が提唱されています。
1. テストステロン産生への影響
複数の研究でアシュワガンダが男性のテストステロンレベルに好影響を及ぼすことが示されています。例えば、2013年のEvidence Based Complementary & Alternative Medicineに掲載された二重盲検ランダム化プラセボ対照臨床試験では、KSM-66アシュワガンダ根エキスのサプリメントがテストステロンレベルを17%増加させたことが報告されています(Nutraingredients-usa)。
テストステロンは筋肉の成長と修復において主要な役割を果たす同化ホルモンであり、テストステロンレベルの増加は筋肉の合成を促進し、筋力や筋肉量の増加をサポートします。
2. コルチゾールレベルへの影響
アシュワガンダの最も有名な効果の一つがストレス軽減効果です。2019年の研究では、8週間のアシュワガンダ摂取によりコルチゾール(ストレスホルモン)レベルが有意に低下したことが報告されています(Th-clinic)。
コルチゾールは異化ホルモンとして知られ、高レベルで慢性的に分泌されると筋肉の分解(異化作用)を促進し、筋肉の成長を阻害する可能性があります。アシュワガンダによるコルチゾールの低減は、間接的に筋肉の成長と回復をサポートする可能性があります。
3. 抗炎症作用と抗酸化作用
アシュワガンダには強力な抗酸化作用があります。抗酸化物質は体内の酸化ストレスを軽減し、細胞のダメージを防ぐ役割を果たします(Shizen-ryohou)。この作用により、激しいトレーニングによって生じる酸化ストレスや炎症反応を抑制し、筋肉の修復と回復を促進する可能性があります。
4. クレアチンキナーゼへの影響
アシュワガンダを摂取したグループでは、運動誘発性の筋肉損傷の指標である血清クレアチンキナーゼの上昇が有意に抑制されていたことが報告されています(PubMed)。これは、アシュワガンダが筋肉の損傷を軽減し、回復を促進する効果を示唆しています。
効果的な摂取方法と推奨量

アシュワガンダを筋トレの成果向上に活用するためには、適切な摂取方法と用量が重要です。研究結果と専門家の見解に基づいて、以下のポイントを押さえておきましょう。
1. 推奨摂取量
アシュワガンダの適切な用量は個人の体質や目的によって異なりますが、一般的には1日あたり300~450mgが推奨されています。初めての場合は少量から始め、体の反応を見ながら徐々に増やすことをおすすめします(gymtier)。
筋力や筋肉量増加の効果が確認された研究では、1日600mg(300mgを1日2回)のアシュワガンダ根エキスが使用されていました(PubMed)。この摂取量を参考にするのも良いでしょう。
2. 摂取タイミング
アシュワガンダの摂取タイミングについては、必ずしも厳密な規定はありませんが、一貫性を持って毎日摂取することが重要です。一般的には、朝と夕方または就寝前の2回に分けて摂取する方法が推奨されます。
3. 製品選びのポイント
アシュワガンダサプリメントの効力はウィタノリドの濃度で決まります。この有効成分が特定量で含まれている標準化された製品を選ぶことが重要です。KSM-66®アシュワガンダとSensoril®アシュワガンダは標準化されており、一貫した効果的な用量を確実に摂取できる選択肢として知られています(Naturecan Fitness JP)。
例えば、KSM-66®アシュワガンダはアシュワガンダの根から採れるエキスを使用した特許取得済みサプリメントで、高いバイオアベイラビリティ(生物学的利用率)を誇ります。各カプセルには高濃度の天然有効成分(少なくとも5%のウィタノリド)が含まれており、元来のハーブのナチュラルなバランスを保っています(Naturecan Fitness JP)。
4. 継続期間
アシュワガンダの効果を実感するためには、ある程度の継続期間が必要です。研究では通常8週間程度の期間で効果が確認されていますが、個人差があるため、少なくとも4週間から8週間は継続して摂取することをお勧めします。
副作用と注意点

アシュワガンダは一般的に安全なハーブとされていますが、いくつかの副作用や注意点があります。
1. 一般的な副作用
アシュワガンダの副作用としては、下痢、頭痛、鎮静、吐き気などがあります。肝臓の問題が生じることもあります(Msdmanuals)。これらの症状が現れた場合は、摂取量を減らすか、使用を中止して医師に相談することをお勧めします。
2. 相互作用
アシュワガンダは甲状腺ホルモンや血糖降下薬、降圧薬、免疫抑制薬、および鎮静薬と相互作用を起こす可能性があります。特に、既存の疾患がある場合や処方薬を服用している場合は、アシュワガンダの使用前に医師に相談することが重要です(Msdmanuals)。
3. 禁忌事項
アシュワガンダは妊娠中や授乳中には使用すべきではありません。また、自己免疫疾患を持つ人やホルモン感受性のある疾患(例:乳がん、前立腺がん、子宮内膜症など)がある人は、アシュワガンダの使用について医師に相談すべきです(Msdmanuals)。
まとめ:アシュワガンダの活用法と将来性
アシュワガンダは、適切に使用することで筋力向上、筋肉量増加、回復促進など、筋トレに関連した様々な効果をもたらす可能性があります。以下に、本記事のポイントをまとめます:
- 筋力向上:複数の研究で、アシュワガンダ摂取によるベンチプレスやレッグエクステンションなどの筋力向上効果が確認されています。
- 筋肉量増加:アシュワガンダはレジスタンストレーニングと組み合わせることで、腕や胸などの筋肉サイズの増加をサポートします。
- 回復促進:アシュワガンダは運動後の筋肉損傷を軽減し、回復を促進する効果があります。
- メカニズム:テストステロン増加、コルチゾール減少、抗炎症・抗酸化作用などが、アシュワガンダの筋肉への効果をもたらすメカニズムとして考えられています。
- 摂取方法:1日300~600mgのアシュワガンダ根エキスを8週間以上継続して摂取することが推奨されます。品質の確保のため、標準化された製品(KSM-66®、Sensoril®など)を選ぶことが重要です。
今後も、アシュワガンダと筋トレに関する研究は進んでいくと考えられます。特に異なる運動タイプ(有酸素運動vs無酸素運動)での効果や、女性アスリートへの影響、長期的な効果と安全性などについては、さらなる研究が期待されます。
アシュワガンダは、古代の知恵と現代科学が融合した興味深い栄養補助食品であり、適切に活用することでトレーニングの成果を最大化するサポートとなる可能性を秘めています。ただし、いかなるサプリメントも適切な食事や効果的なトレーニングプログラムの代替にはならないことを忘れないでください。バランスの取れた食事、計画的なトレーニング、そして十分な休息を基盤として、アシュワガンダを補助的に活用することが最適なアプローチといえるでしょう。
参考文献
- Wankhede, S., Langade, D., Joshi, K., Sinha, S. R., & Bhattacharyya, S. (2015). Examining the effect of Withania somnifera supplementation on muscle strength and recovery: a randomized controlled trial. Journal of the International Society of Sports Nutrition, 12, 43.
- Lopresti, A. L., Drummond, P. D., & Smith, S. J. (2019). A Randomized, Double-Blind, Placebo-Controlled, Crossover Study Examining the Hormonal and Vitality Effects of Ashwagandha (Withania somnifera) in Aging, Overweight Males. American Journal of Men’s Health, 13(2).
- Ziegenfuss, T. N., Kedia, A. W., Sandrock, J. E., Raub, B. J., Kerksick, C. M., & Lopez, H. L. (2018). Effects of an Aqueous Extract of Withania somnifera on Strength Training Adaptations and Recovery: The STAR Trial. Nutrients, 10(11), 1807.
- Chandrasekhar, K., Kapoor, J., & Anishetty, S. (2012). A prospective, randomized double-blind, placebo-controlled study of safety and efficacy of a high-concentration full-spectrum extract of ashwagandha root in reducing stress and anxiety in adults. Indian Journal of Psychological Medicine, 34(3), 255-262.
- Ambiye, V. R., Langade, D., Dongre, S., Aptikar, P., Kulkarni, M., & Dongre, A. (2013). Clinical Evaluation of the Spermatogenic Activity of the Root Extract of Ashwagandha (Withania somnifera) in Oligospermic Males: A Pilot Study. Evidence-Based Complementary and Alternative Medicine, 2013, 571420.